ADSL / 概要 / 技術 / 機器 / サービス提供上の問題点 / 日本国内でのサービス提供事業者 / 世界のADSL技術 / 世界のDSL普及率 / 関連項目 / 脚注 / 外部リンク
サービス提供上の問題点
通信速度
通信線路#加入者線路|加入者線路は音声などの低周波伝送を満たすシールドなしツイストペアケーブルを使用しており、これを高周波伝送に転用しているため、その伝送特性が保障されておらず、速度や安定性などが設置条件によって大きく左右され、通信品質を保障することができない(ベストエフォート)。実際のところ、通常の使用環境では最良でも理論値の70〜80パーセント程度となる。ADSLの速度低下の主な要因としては次のものがある。影響が大きい場合は、速度低下のみならずADSL通信そのものを確立できない(「リンクアップ」しない)状況に至る。
通信線路の損失 電話局に設置された端末装置 (デジタル加入者線#DSLAM|DSLAM) からの延長距離
: 利用場所から局内端末装置までの距離が長いほど損失が大きくなり、通信速度が低下する。周波数の高い帯域ほど距離による影響が大きく、クワドラブルスペクトラム方式の場合は局内端末装置から1kmで理論値の半分にまで速度が落ちる。
: 端末装置が置かれた電話局を公衆交換電話網#デジタル化時代の電話網|GC局というが、ある利用場所からの通信線路#加入者線路|加入者線路を収容している電話局(公衆交換電話網#自動交換化時代のアナログ電話網|端局またはEO局という)が必ずしもGC局であるとは限らない。ADSLの普及が遅れている地域では、EO局からGC局までNTT東西によって内部中継されており、利用場所から局内端末装置までの総延長が長くなる傾向がある。なおEO局からGC局までの内部中継が光回線で行なわれている場合は後述の問題点「ADSL#光収容|光収容」に該当する。 「ブリッジタップ」など、分岐接続の存在による信号減衰 主配線盤・端子函などでの接触不良による電気抵抗増大
外来ノイズ 送電線・幹線道路・鉄道の架線などから放射される電磁波 ラジオ|中波放送(AMラジオ)やアマチュア無線などの「周波数が競合する電波」(専用のノイズフィルターが市販されている。この問題は後の電力線搬送通信|PLC通信においてラジオ|中波放送と競合する周波数帯を使用しない事に反映されている) ツイストペアケーブルの同一クワッドのISDN#TCM-ISDN|TCM-ISDNとADSLの周波数帯域重複(いわゆる「ISDNからのノイズ干渉」)しかしながら、線路情報開示システム(NTT東日本・NTT西日本)にアクセスして電話番号を入力すれば、電話局からの距離や回線損失などの回線の状況を知ることはできるものの(回線が光収容の場合はエラーになる)、実際には「契約可能区域」となっているにも係わらず、地方など交換局が疎になっている地域やノイズの多い地点などでは、速度が大きく低下する、または接続できない地点が存在することとなる。ただ、回線の通信速度が遅い問題や、接続できない(リンクできない)問題は、モデムの技術水準向上や各種の技術開発により、普及開始当初よりは大きく改善している。ADSLという技術自体が2000年代に入ってから実用化され通信方式として歴史が浅いこともあり、ADSLモデムのファームウェアを最新のバージョンに入れ替えるなどで通信状況が改善されることも多い。業者の中には、通信速度が上がらない、通信できないにも係わらず解約に応じないと問題視されている事例もあり、国会などでも取り上げられた。現在に於いても無理な契約と顧客の無理解が重なり、開通後に「速度が上がらない」などの苦情が絶えない。また、広告での「最大速度は理論値であり、必ずしも仕様通りの速度が出ない」ことへの注意書きの扱いが小さいとして、業界へ公正取引委員会からの指導も入った(電気通信役務#日本の電気通信事業法における利用者保護も参照)。数十Mbpsといった理論上の最大速度は、恩恵を受けられる場所が電話局周辺に限定されることや、古いパソコンや初心者ユーザにはオーバースペック(過剰性能)の場合もあり、2005年頃から、ADSL登場初期のような下り1Mbps・上り512Kbpsなどの低速・低価格サービスが限定的ながら再開されている。 未提供地域の存在による格差
ADSLを始めとしたブロードバンドは基礎的電気通信役務として位置付けられておらず、あまねく全域へ提供することが法的に義務づけられていないため、町村や離島への未提供と、それに伴う料金の地域格差拡大の恐れもある。また、対応インターネットサービスプロバイダにおいても地域格差が生じている。例えば、ADSLを加入者接続に利用する場合、NTTなどのアクセスライン提供事業者が設置する相互接続点に専用線でサービス提供用サーバなどを接続しなければならない。これらの機器・回線を他の事業者の社屋に有料で設置するなど高額な費用がかかる為、都市圏のプロバイダのみしか新規参入がしにくいという問題も抱えている。 光収容
光収容とは、通信線路#加入者線路|利用場所から電話局へ到るまでの伝送路において、電線そのままではなく途中で光ケーブルへ変換(収容)されていることを表わす用語。対語はメタル収容。ADSLは音声通話帯域よりも高い周波数帯域をデジタル情報伝送に利用する技術であるが、光ケーブルでの音声伝送は、その高い周波数帯域の伝送を想定しておらず、光収容(音声多重化)の際には不用帯域としてカットされてしまう。このため、伝送路の途中や電話局側末端で光収容されている加入者回線は、ADSL信号を透過させることが出来ず通信が成立しない。光収容加入者は、残置されている空きのツイストペアケーブル(メタル回線)があった場合にのみ、収容替え工事を加入者負担でした後で、ADSLの工事が可能である。しかし、コンテナタイプの簡易局舎などで遠隔多重加入者線伝送装置(RT:Remote Terminal,RSBM:Remote SuBscriber Module)に接続されていたり、マンションなどの集合住宅で主配線盤に光ケーブルのみが引き込まれているなど、切り替えが不可能でADSLが利用できない場合もある。2000年代に入り、幹線部分のメタル通信線路の新設が停止されているため、光収容加入者はさらに増加するものと考えられる。ただし、都市部などでは、以前より普及しているケーブルテレビ|CATVのインターネットサービスや、2004年〜2005年辺りからの光ファイバー回線(FTTH/FTTx)の本格的展開普及により、ブロードバンドインターネット接続|ブロードバンド回線が引けない問題はおおむね解消されつつある(しかし集合住宅など、一部には依然としてその問題は残っている)。 ISDNからADSLへの切り替えに伴う通話サービス低下
日本方式のISDN(INS64)とADSLとは多重化して使用出来ないため、INS64をアナログ固定電話に切り替える必要がある。インターネット回線の速度向上を主眼に切り替えを行なう利用者が多いが、音声通話の面でサービス低下が顕在化する場合が多い。代表例はi・ナンバーにて複数番号を利用していた場合で、アナログ固定電話へ切り替えた後も回線数を維持する場合はダイヤルインを契約する、IP電話を契約するなどの追加費用が必要となる。アナログ固定電話に比してINS64は、提供される電気通信役務|付加サービスが高機能であることや、漏話と呼ばれる現象(他の電話線との間で、干渉により通話音声が互いに漏れる)
が生じにくいなどの通話品質が高いため、アナログ固定電話への切り替えを避け、タイプ2というADSL専用の回線を引き込む場合もある。 普及の遅れ
アメリカ合衆国|アメリカでADSLの普及が始まった当初は、アメリカと同様に電話回線敷設状態の良い日本でも速やかな普及が期待されたが、実際にはアメリカよりも大きく遅れて普及した。背景として電話加入者回線を独占的に保有しているNTTが、ADSLへの対応に消極的であった点が指摘されている(国策による)。NTTは当時、加入者までの光ケーブルによる高速回線(FTTH)が普及するまでの間は、一般家庭や小規模事業所向けのインターネット接続に既存のISDNの利用を促す構想を持っていたと言われ、より高速・安価で日本方式のISDNとの干渉問題があるADSLの登場による、ISDN及びFTTHの普及阻害を危惧したとされる。大手ADSL事業Yahoo! BBが急激な加入者増加に伴って開通作業が大きく遅延し問題になった際、批判を受けたYahoo! BB側が「原因はNTTの作業遅延にある。NTT電話局への弊社ADSL端末装置設置が迅速ではない。」と声明するなど社会問題に発展し、背景にNTTの構想があるのではと憶測された。なお、NTT電話局舎内への他事業者装置設置については、その設置スペースをYahoo! BBが独占しているとして新規参入の他ADSL事業者が抗議するなど、問題が生じた。これらの批判を受け、2001年6月の国会にて、日本電信電話株式会社等に関する法律|NTT法と電気通信事業法の改正が可決され、NTT東日本・NTT西日本はこれを受け、同年末に未使用のメタル回線(ダークファイバー)を各ADSL事業者に積極的に割り当てるようになった。現在は、NTTもFTTHとADSLの2本立てでブロードバンド対応を進める方針を明確にし、自社ブランド「フレッツ・ADSL」でのADSLサービスも開始していることから、普及遅れの背景は消失したとみられる。 複雑な利用者契約
アクセスラインのみ提供の電気通信事業者が行う回線サービスである場合(2006年現在、NTTグループ|NTT東西のフレッツのみ)、あくまで加入者と電話局との端末装置同士で高速通信を実現するものである。この為、インターネットへの接続には、インターネットサービスプロバイダとの契約も必要である。また、プロバイダがADSL接続業も兼ねている契約形態でも、加入者回線を使用するために、当然NTTなどの通信回線を保有する電気通信事業者と契約をしている必要がある。従って、計2種類の事業者と契約する必要があることになる。この煩雑さは、通信回線の保有とプロバイダ事業を合わせて行うケーブルテレビ|CATVには無い部分である。ただし、プロバイダ側が、ISPサービスの申し込みと同時にフレッツの申し込みを代行受付し、料金請求も合算して行っている場合もある(しかし契約はあくまでも2箇所である)。ユーザー側から見た場合には、この契約の手続きを少しでも簡略化するためと、プロバイダ側のユーザー囲い込みも目的に、プロバイダがADSL接続業も兼ねている契約形態(Yahoo! BBやTNC「ADSLパワーライン」)や、プロバイダが窓口となってADSL契約も一括して行う形態(ADSL提供業者がイー・アクセスやアッカ・ネットワークスの場合。ホールセール(wholesale = 卸売)とも言う)もあり、利用可能な地区の場合には「フレッツ・ADSL」料金 + プロバイダ料金より総額料金が安く設定されているが、この場合にはADSL接続で複数のプロバイダを切り替えて利用できない欠点がある。直収電話に変更した場合には、系列企業のADSLサービスだけしか利用できない、IP電話サービスは利用不可、公称速度(Mbps)が低いタイプしか利用できない、などの制限がある。 保安器の問題
ADSLはFTTHと異なり電話線を利用するため、保安器がADSLに適合していないと、電話やFAXを利用する時に一度回線が切断されてしまう。保安器を新しいものに替えれば問題ないが、余分に費用がかかることがある。
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