歴史
空想上の概念としては、1972年にデイヴィッド・ジェロルドによるSF小説 '':en:When_H.A.R.L.I.E._Was_One|H・A・R・L・I・E'' において、「ウイルス」プログラムと、それに対抗する「ワクチン」プログラムが登場している。情報科学の世界ではじめて「ウイルス」の語が使われたのは、1984年に当時ニューヘブン大学の学生であった Fred Cohen が発表した研究論文中といわれている
[Fred Cohen, "Computer Viruses - Theory and Experiments" [http://all.net/books/virus/index.html]]。実装上のウィルスの起源は1960年代にC言語の開発者としても知られるデニス・リッチーらによって作成されたDarwinおよびその移植Core Warsという対戦型のコンピュータゲームにまでさかのぼる。DarwinはPDP-1上で動作する仮想マシン上で、ターゲットを上書きすることで勝利する、疑似アセンブリコード同士を競わせるプログラムであり、当初は生命の定義や人工生命の可能性についての研究―自身を複製できるものが生命なのか、生命が存在するために最低限必要なことはなにか(捕食対象の識別、あるいは自己と他者の認識や自己防衛とは何か)―を研究するための“仮想環境と生態系”として研究者に利用されていた。やがてプラットフォームの更新による仮想マシンや実行環境の整備、という工程を短絡させる形で現在の、『ネイティブなソフトウェア』としてのウィルスにその流れが引き継がれることになった
[Mark Ludwig,"The Giant Black Book of Computer Virus"およびEric S.Raymond,"The New Hackers Dictionary"]。
。現在ある形での最初のウイルスがどれであるかについては諸説ある。1970年代には Creeper と呼ばれるワームがARPANET上で確認されていた。狭義のコンピュータウイルスとして世界初のものは、1982年に当時ピッツバーグの高校生であった Richard Skrenta によって作製された Elk Cloner で、Apple II にのみ感染するものであった
[Richard Ford and Eugene H. Spafford,"Happy Birthday, Dear Viruses", ''Science'' 317, 210 (2007). ]。1986年には、パキスタンのコンピューター店を経営するアムジャット兄弟(プログラマー)が、不正コピー防止を訴えるために「Brain (コンピューターウイルス)|Brain」を作製し、これがIBM PCに感染する初のウイルスといわれている。日本では1988年、パソコン通信を介してウイルスに感染したものが最初とされる。Elk Cloner をはじめ、1980年代初期のウイルスは単に自らのコピーを複製し、フロッピーディスクなどを媒介としてコンピュータ間に感染するだけで、時にメッセージを表示して利用者を驚かせる程度の無害なものであった。ところが、1980年代後半以降ウイルスは徐々に進化し、現実的な被害をもたらす原因になりはじめる。1988年に Morris Worm が稼動しはじめたばかりのインターネットに被害をあたえ、1992年3月6日に Michelangelo が感染者のデータを一斉に破壊すると、コンピューターウイルスは現実的な脅威として認識され、マスコミ等でも報道されるようになった。1999年には電子メールの添付ファイルによって感染する初のウイルス Melissa がつくられ、感染力が飛躍的に増大した。2001年にはサーバ上のセキュリティホールを悪用する Code Red が登場、同年にはウェブサイトを閲覧するだけで感染する Nimda も作成され、爆発的に広がった。一方、ウイルスを除去する「ワクチン」の開発もウイルスの進化と平行して進められ、1988年には最初期のアンチウイルスソフトウェアのひとつ Dr. Solomon's Anti-Virus Toolkit がリリースされている。今日では、単なる愉快犯的ウイルスから、クレジットカード番号などの個人情報を引き出して悪用するものまで、数万種のウイルスが存在していると言われ、アンチウイルスソフトウェアを含めたコンピュータセキュリティの市場規模は2008年には全世界で数十億ドルに達するものと予測されている
[http://www.symantec.com/region/jp/news/year04/040922.html]。