概要
20世紀末に始まったインターネットの発展と普及に伴い、コンピュータセキュリティは非常に重要な課題になった。一般に、インターネットの通信は暗号化されておらず、その中継点にいる人間なら誰でも盗聴できてしまうという欠点をもつ。またこれ以外にも、コンピュータが外部と接続されたことによって悪意のある人間が故意にコンピュータを破壊したり、データを改竄したりすることが可能になってしまった。コンピュータセキュリティとは、このような行為を防ぐこと(保安)をいう。一般にセキュリティと利便性は相反する性質のものである。現在のコンピュータではおもにユーザIDとパスワードによってユーザを認証しているが、セキュリティを確保するために利用者が頻繁にパスワードを入力するようではシステムが使いづらくなってしまう。かといって、パスワードを要求しなければ情報が他人に悪用される可能性がある。利便性を減らさずにセキュリティを高める方法を見付けるのがコンピュータ・セキュリティ研究の目標である。コンピュータ・セキュリティ研究では暗号化方式や認証方式を道具として用い、加えて実装に依存したコンピュータのソフトウエアおよびハードウエアの知識を用いてセキュリティを高める方法を研究する。従来のコンピュータシステムのほとんどが利便性を優先させたシステムであり、インターネットなどの設計思想が性善説に基づいていることもあり、セキュリティの改善はむずかしい。また、ソフトウエアが複雑になりすぎたことによって、設計者の意図しなかった場面で不正利用が可能になってしまう場合がある(この脆弱性をセキュリティホールという)。コンピュータシステムの総合的なセキュリティの向上は、ソフトウエア工学や心理学なども考慮しなければならない難しい問題である。